1. デザインにデジタル表現手法が求められている 現在の商品開発におけるデザインは、狙いや目標を定めアイデアを追及、モデルで立体確認、バーチャルでシュミレーションしてアイデアを進化させる開発プロセスである。IT技術の進歩はこれらのデザイン開発の役割が自己完結できるデザイナー像が求められるようになった。ものづくりのアウトプットはデータであり、データを共有して設計開発が平行して行われる。
デジタル化時代のデザイナーは、初期の段階からものづくりのプロセスを理解しておかないといけない。曖昧なデータを渡すと、ものづくりの部門は混乱し製品開発の流れも停滞する。それだけでなくデザイナーの意図したカタチまでもが変わってしまう危険性がある。デザインの始まりから開発担当だけでなく生産を担う部門との密接な連携がなければ、イメージしたデザインを製品に生かすことは難しいといえる。
デザインの段階で、次工程から要求される完璧なデータを作成するために、デジタル化したイメージを繰り返しチェックして修正する。製品分野とものづくりプロセスの違いで不可能な場合はあるが、チェックする方法がポイントといえる。デジタル化されたデザインを評価するには、CADの画像処理だけでは難しい。現実の空間に置いたときの雰囲気、質感、ボリュームまで忠実に再現できていないのが現状である。そのため実際に、イメージから作成したデータを立体化することが必要となる。これによりデジタルの処理結果を現実の目で直接評価が可能になる。
すべてのプロダクトのデザインフローにおいてデジタル表現で立体化できるわけではないが、デザインの分野で有効なチェック方法として活用されている。
2.NC加工を取り入れたデザイン教育への効果 現在、本学の学生はRhinocerosとSolidWorksで3Dデータ作成の手法を演習科目で学んでいる。デザインしたモデルイメージをデジタル手法でCAD画像に表現して評価を受けている。その作成されたデジタル化したデザインはそこで一つの区切りとなって完了している。前項のデジタル表現手法の次の段階までには到達していない。すなわち造形目標があってこそデータを作成するのであり、それを立体化してこそデザインの評価ができる。CADコマンドの習得度の評価とデザイン評価は本質的な違いがある。データ作成を学ぶ学生としては、そのデータ作成の重要性とものづくりプロセスとの関連、さらにカタチとして具体化した時に、いかにバーチャルな空間とのリアリティの違いがあるかを体験すべきである。
そのために今回、プラスチック加工室に既設の平安コーポレーション製のNC加工機を稼動させて、デザインしたイメージを実際に具体化できる方法を検討した。条件としては、3DCADのデータをそのまま活用してNC加工用のCAMデータが容易に作成できること、そして最小限の費用で構成できることにある。そこでCAMソフトと、NC機の制御装置にデータを送るDNC通信ソフトの選定を行った。
構成図で示すように、3DCADで作成した3次元データは直接CAMに取り込むことが可能である。CADでモデリングしたデータは、学生にとって貴重な成果でありこれを立体化すると、その3次元形状に触れることが可能となり、頭の中のイメージをCADデータと現物の立体と比較検証できる。これによりCADの画面で気が付かなかった曲面相互の接合具合、曲面の徐変Rも手触りで感じ取ることができるのである。
デザイン教育の現場では、紙面上に描くイメージ表現力がデザイン評価として重視されるが、それとともに3次元CADなどのデジタルツールを使った表現手法の評価がデザイン教育に取り入れられた。学生は、CADソフトを短期間に習得してバーチャルな空間に思い描いた立体を創り出すことができるが、それを実際の立体に再現できれば、さらに教育的な効果が期待できる。

本学のCADからCAMへの構成
3.本学でモデルのNC加工を実施した事例 NC機を稼動させて、立体のモデルを切削した事例を解説する。デザイン学科の卒業制作で車のデザインモデルを作成した事例である。
(図1)は手書によるアイデアスケッチ。
(図2)は3次元CAD(Rhinoceros)作成した3Dモデルである。滑らかな曲面で全体が構成されている。曲面の品質はCADの処理のなかで幾何学的に評価ができるが、前述したようにその質感などは分かりにくい。
(図3)はCADデータをCAMソフト(VisualMill)に取り込み加工パスを描画した画像である。使用するカッター形状を画面入力して切削シュミレーションを行い形状確認できる。
(図4)はNC機で切削中のモデル。1/2スケールで大きいため、モデルを左右に分けて加工をしている。
(図5)は切削が完了して左右を貼り合わせたモデル。
本記事は、梅本良作 様(大学院デザイン研究科/ヤックX 商品開発部 テクニカルディレクター)、川島奈々 様(デザイン学部生産造形学科)にご執筆いただいております。